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従業員を事業主の都合で仕事を休ませた場合、休ませた従業員の賃金を補償する必要があるのでしょうか?【賃金対策部】

2024年7月に行われた賃金対策部会にて『従業員を事業主の都合で仕事を休ませた場合、休ませた従業員の賃金を補償する必要があるのか?』というテーマで勉強会を行いました。

 

以下、その勉強会資料となりますので、ご興味ある方は是非ご覧ください。

 

<第3回賃金対策部学習会>

休業補償(労働基準法26条と民法536条)について
従業員(労働者、被用者)を事業主(使用者)の都合で仕事を休ませた場合、休ませた従業員の賃金を補償する必要があるのでしょうか?
あるとしたら、どの程度の補償が必要でしょうか?

まずは関係ありそうな法律の条文を見てみましょう。

 

労働基準法第26条(休業手当)

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

会社は平均賃金の60%以上を支払え、と規定していますね。

 

民法第536条(債務者の危険負担等)第2項

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

従業員は全額もらう権利がある、と規定されているようにも見えます。

 

では、実際に平均賃金の6割を支払えば済むのか、10割全額支払わなければならないのか、現実に労働者を休業させたときに一体どちらの条文に基づき、賃金をいくら支払うべきなのか、非常に迷うところです。

→答えは「契約による」です。

 

労働基準法では、休業手当を60%以上支払わなければ行政指導や刑事罰の対象とするとして最低基準を定めている訳であり、6割支払えばそれで十分とは言っていません。

 

一方、民法の危険負担の条文は任意規定である為、労使の合意によって適用を除外することが可能です。労使間において休業手当6割で合意すれば、6割の支払いで済むことになります(ただし、労基法の規定により労使合意があっても6割を下回ることはできません)。

逆に言えば、合意がない限り賃金全額を支払う義務が会社側に生じるということです。要注意です。

 

結論としては、休業手当に関しては予め就業規則において包括同意をとっておくことが望ましいといえます。合意なしであれば100%満額、合意したときには60%以上の任意の割合で、ということになります。

 

ただし、これはあくまで会社に故意・過失等がある場合に限られます。休業させたことに関して会社側に故意・過失等が認められない場合は、契約の如何にかかわらず、民法上の100%を支払う義務はありません。この場合、休業の原因が、会社側に起因する経営上の障害によるものかどうかによって、60%の支払いが必要か不要かという選択肢になります。

言い換えれば、労基法26条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法536条の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く解釈される(使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む)ということでもあります。

 

なお、労基法による平均賃金の6割とは、所定労働日のうちの休業させた日に対して支払うものであるため、元々休日であった日に対しては支払われず、実質は給料の4~5割になることが予想されます。一方、民法の規定によれば元々の給料を全額ということになります。ややこしいので注意です。

 

 

以上です。

東京土建では労使関係等の相談も承っております、顧問契約している弁護士との相談会も毎月開催しております。

組合員の方でお困りの際は江戸川支部までご相談ください。

 

 

東京土建江戸川支部:03-3655-6448